青森県三沢市、青い森鉄道の三沢駅から車で約40分。
ラムサール条約に指定された湿地帯があります。
その場所の名前は「仏沼(ほとけぬま)」
仏沼の面積は222haで、東京ドーム約42.77617個分。
この仏沼には、幻の鳥と呼ばれる「オオセッカ」が生息しています。
そして、国内で繁殖するオオセッカの約半数が、ここ仏沼に生息しています。
今回は、この仏沼へ訪れて、幻の鳥「オオセッカ」を探してみました!!
訪れたのが9月だったので、オオセッカに会えるかは少し心配ですが…
9月の仏沼は、さえずり目的だと時期外れ
今回、仏沼に訪れたのは時期は、9月。
湿地帯の鳥さんは、繁殖期だと草の目立つところでさえずってくれるのですが、繁殖期を過ぎると草の中に隠れるようになってしまい会うのが難しくなります。
9月という時期は、ほとんどの鳥さんが繁殖期を終えている時期で…
幻の鳥さんに会えるか、とても怪しい時期でした。
それでも、9月に青森に来てしまったのだから、可能性が低くても行くしかありません。
仏沼にはレンタカーで
青い森鉄道の三沢駅から徒歩30分のところにあるレンタカー屋さんで車を借りて向かいます。
ただレンタカー屋さんは、三沢駅でも三沢空港でも、どちらからでも迎えに来てくれるので便利です。
免責補償込みの2日レンタルで11,380円。
今回は、仏沼の駐車場で車中泊をするので、宿泊費込みと考えれば安いかな…
>>>管理人も利用しました!ウィングレンタカー三沢4WD専門店
車を走らせて、約40分。
国道からだと途中にあるファミマ、県道だと道の駅「みさわ」が最終買出しポイントです。
お昼ご飯を買っておきます。
あと、水。
そうして、ナビに従って車を走らせると、到着!
仏沼には駐車場が2つありますが、国道沿いの「仏沼 北口駐車場」しかGoogleマップに登録されていません。
駐車場の詳細については、仏沼の概要を紹介しているページをご確認ください。
北口駐車場は仮設トイレと5台が停められるスペースがあります。
看板とパンフレットも。
仏沼の3つの散策コース
仏沼の散策コースは、現地の看板によると、3つ設定されていました。
- 三角池コース:オオセッカ、コジュリン、オオジュリン、コヨシキリ、チュウヒ、ノスリなど
- 牧場巡りコース:オオセッカ、コジュリン、カワラヒラ、チュウヒ、ノスリ、アオサギ、ダイサギ、カルガモなど
- 平成池コース:オオバン、カルガモ、カイツブリ、カンムリカイツブリ、オオセッカ、コジュリン、オオジュリン、チュウヒ、クイナ、稀にサンカノゴイの鳴き声
と、3つのコースがあります。
どのコースを歩いても、オオセッカがいそうな原っぱが広がっています。
入り口に置いてあったパンフレットによると、草丈が微妙に違っていて、それぞれの鳥さんが好む草丈があるとの事です。(環境による棲み分けが起こっているんですね)
9月の仏沼は…
そんなわけで、9時にレンタカーを借りて、10時前に駐車場に着いたんですが…
静か。
鳥さんの鳴き声が、ほとんど聞こえません。
草原性の鳥さんは、繁殖期は目立つところでさえずってくれるけれど…
繁殖期が終わると、草の中で行動するようになり、ほとんど会えなくなってしまいます。
嫌な予感がしつつ、砂利道を歩いていきます。
両脇にはヨシとススキ。
風で揺れる音。
遠くで車が走る音。
航空機が飛ぶ音。
肝心の鳥さんの声が聞こえません。
んー…
これはどうしたものかと思いましたが、
こんなこともあろうかと、レンタカーを2日借りています。
明日は、早朝から仏沼探鳥して、今日がダメだった時の保険をかけています。
この日は、到着が10時で、野鳥観察のゴールデンタイムを逃してしまったので、まぁ致し方ありません。
とりあえず声がしないなら、歩いて歩いて歩くだけ。
仏沼の三角池コース
三角池コースを歩いていると、ボソボソと鳴き声が聞こえてきますが、草の中。
期待感のない状況です。
静かな散策路を歩いていると、道端に何やら鳥影が。
日差しが強く影が濃かったので、コジュケイかと思いましたが、ちゃんと確認したらウズラでした!
ウズラとの出会いは初めてだったので、感動です!
ウズラはすぐには逃げずに、少し間をおいて草むらの中に入っていきました。
そうして、三角池1周目は、幻の鳥さんには会えず。
仏沼の平成池コース
次に平成池方面へ向かいます。
9月だと平成池コースがおすすめらしいのですが、平成池に向かう道は…草ボーボー
それでも草をかき分け進みましたが、池が見当たりません。
どこを見ても草ボーボー。
Googleマップで確認したら、目の前が池らしいです。
なのに、草ボーボー
池が草で覆われてました。
それで、また草をかき分けて、三角池コースへ戻ります。
再び、三角池コースへ
三角池コースに戻ってきても、やっぱり静か。
それでもさっきから鳥さんが草むらから飛び出してきてはいます。
鳴き声と翼の黄色い翼帯からカワラヒワです。
カワラヒワも姿を見せてくれるなら、じっくり見たいのに…
飛び出しても離れたところに飛んで行ったり、草の中に隠れたり…
身近な鳥さんのカワラヒワも、かなり警戒心が高かったです。
幻の鳥さんの気配は今のところゼロ。
空を見上げると、猛禽類がたまに飛んでいます。
ノスリに、トビ…
チュウヒは見当たりませんでした。
ついに…
そうして三角池コースを、行ったり来たり歩いていると…
突然、鳥さんが鳴きながら飛び出してきました!!
草の中に隠れないで…と祈りながら、カメラを向けると、そこには…
オオセッカ!!
出会えました!幻の鳥さん、オオセッカです!
見た感じは、セッカと言えなくもないですが、
セッカを見慣れていると、やっぱり違う印象を受けます。
ずっと静かだったのに、急に飛び出してきて、警戒しているのか激しめに鳴いていました。
まだ子育てしているのか、近くに雛がいるのか…
明らかに警戒している鳴き声でしたが、出てきてくれたので、少しだけ撮影させてもらいました。
なぜオオセッカは幻の鳥?
オオセッカがなぜ幻の鳥と呼ばれているのか?
それはオオセッカが新種として発見されてから、2度も絶滅したと考えられたからです。
生息が確認された現在でも、国内で3,000羽ほどしかいない絶滅危惧種に指定されている鳥さんなんです。
仏沼の夕日
ススキやヨシ原、原っぱが夕焼けに染まる景色は、日本の原風景という感じがして、魂に刻まれた懐かしさを覚えませんか?
仏沼も夕日が綺麗な場所で…
ノスタルジーな雰囲気が漂っていました。
朝日と夕日でそれぞれ見所スポットがありましたが、朝日スポットは北口駐車場からは遠かったので…
本来の目的のオオセッカ探しを優先しました。
仏沼探鳥2日目〜早朝から
そうして、北口駐車場で車中泊して、2日目の朝を迎えるのでした。
仏沼2日目。
駐車場を照らす朝日が、時折雲に隠れながら、ヨシ原を照らす。
少し向こうの方では、白くもやがかかっている。
昨日、睨んだ通り、朝からオオセッカの鳴き声が聞こえてくる。
しかも駐車場の目の前の草むらから。
だけど、地鳴きばかり。
セッカは10月頃までさえずるので、オオセッカも朝ならさえずってくれるかと思いましたが、オオセッカの繁殖期はすでに終わったようで、さえずる気配すらありませんでした。
とはいえ、昨日とは違って、至る所で地鳴きが聞こえてくるので、早速探鳥に向かいます。
2日目のオオセッカは…
結果、昨日の撮影よりも上手くいきませんでした。
繁殖期が終わっていて、幼鳥と行動していたり、幼鳥同士の群れだったり…
とにかく自分をアピールする期間では無くなったので、わざわざ危険を冒して開けた場所に出てくることもないんですよね。
地鳴きはすれど、こちらに姿を見せてくれる事もなく。
見せてくれても、すぐに草むらに隠れてしまう。
「いのちだいじに」の行動パターンになってしまってました。
昨日と同じように、歩いて歩いて歩いて…
行ったり来たりしたけれど、鳴き声がしていてもチャンスをくれず…
あっという間に10時に。
昨日到着した時のような静けさが訪れてしまいました。
それで、闇雲に歩いても疲れるだけだと思い、朝によく鳴いていた場所で座り込みをしていました。
草むらから顔を出すのは…
風のそよぐ音を聞きながら、静けさに身を任せていると、ついウトウト…
いかんいかんと、顔をあげると、なんだか鳥の顔みたいなものが地面から出ている気がします。
枯葉?
と思ったんですが、シルエットは完全に鳥の頭でした。
ゆっくりと双眼鏡で確認してみると…
地面の雑草からウズラが顔を出していました!
あ、ここは昨日もウズラが佇んでいた場所でした。
昨日は逆光気味で、撮影状況が良くなかったですが、今度はちゃんといい感じ。
動くとウズラが逃げてしまうので、体をよじって撮れるギリギリの画角でしたが…
なんとかそのお姿を撮影できました!
その後、オオセッカの気配はなく、たまに上空を舞うトビとノスリに遊んでもらい…
レンタカーの返却時間に間に合うように仏沼を後にしました。
9月の仏沼は?
オオセッカは、地鳴きと警戒鳴き。
場所によっては、飛び出してきて警戒鳴きをする個体もいました。
コヨシキリは、早朝にはぐぜり鳴きをしていましたが、基本的に草の中に隠れていました。
たまによじ登って姿を見せてくれますが、こちらがハッキリと確認できるところには出てきてくれませんでした。
コジュリンは地鳴き。
たまに飛び出して、近くの草にとまってくれました。
成鳥の姿は確認できず、幼鳥ばかりでした。
オオジュリンは、地鳴きが遠くで聞こえていましたが、姿は見られませんでした…
カワラヒワの群れは、かなりの存在感でしたが、人の気配を感じると、すぐに飛び去っていきました…
幼鳥が多くいた群れでした。
基本的にすべての鳥さんが、草むらの中に隠れて過ごす傾向にありました。
上空には、トビの群れ、ノスリが見られました。
畑や牧場の周辺では、モズやダイサギ、アオサギ、キジの家族群れ。
たまにウズラが草むらから出ている事も…
平成池などの池は、草に覆われて池と確認できる状態ではありませんでした。
繁殖期には野鳥たちのさえずりで賑やかになり、さえずりのシャワーと称される仏沼も、
9月には野鳥たちの恋の季節も落ち着き、風がそよぐ音が心地いい仏沼でした。
最後に仏沼のパンフレットに書かれていた、それぞれの季節の状況について共有しておきます。仏沼を訪れる際の参考にしていただけると、幸いです。
仏沼のパンフレット情報
春:3〜5月
おすすめコース:三角池(オオセッカ)コース2km、1時間
3月、北へ帰るガンやハクチョウが羽を休めます。
4月、雪融けとともにオオセッカが戻り、枯れ色の草原に姿を潜め湿原の芽吹きをじっと待ちます。
5月に入るとコヨシキリ、オオヨシキリ、オオジュリン、コジュリンなどが戻り、北へ向かうシギやチドリ、タヒバリ(旅鳥)が立ち寄ります。
空高くひばりのさえずりがのどかな春を歌います。
春の野焼きは枯れ色の湿原を黒く焼き焦がし、芽吹きが湿原を若草色に塗り変えて行きます。
タテハチョウが日だまりの中で命の日を燃やす春です。
初夏:6〜7月
おすすめコース:三角池(オオセッカ)コース2km、1時間
環境教育牧場沿いコース3km、2時間
平成池(カンムリカイツブリ)コース3km、2時間
ヤマセが冷たい海霧を運びこみ、仏沼を乳白色に包み込みます。
湿原は若草色に染まり、オオセッカのさえずりが舞い上がります。
仏沼は野鳥の密度が高く、オオセッカやコジュリン、オオジュリンなどのやちょうのさえずりはまるで降り注ぐシャワーのようです。
ヤマセが弱まると緑の草原に青い空が戻ります。
浮かぶ真っ白な雲がさわやかで、オオセッカを始め、たくさんの鳥たちが子育てに忙しい季節です。
夏から秋:8〜11月
おすすめコース:平成池(カンムリカイツブリ)コース3km、2時間
緑の湿原が黄金に輝くうねりに変わり、秋の訪れを告げ、鳥たちに旅立ちをうながします。
にぎやかだった鳥の恋の歌は消え、親子であろうか互いを気遣う小さな声がそこかしこから聞こえ、風とともに草原のさわめきとなります。
ガンやハクチョウが北国の風を大きな翼に乗せて運んできます。
色を失った草原に新たな命が到来します。
冬:11〜2月
おすすめコース:冬の小川原湖畔
※冬の仏沼は雪に埋もれているため、車の侵入が禁止となります。
※スノーシューまたは歩くスキーでの散策は可能です。
風と雪をはらんだ灰色の空、すべてが凍る一面の白い世界。
息をひそめた音のない雪原に刻まれたたくさんの足跡が、厳しい冬を生きる命のあかしです。
小さな命の営みに鋭い猛禽の目が光る冬です。
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記事を作成した人
SHOTA
Respect Animals… 20歳頃から、野鳥に惹かれて近所を散歩していたら、車に乗って鳥さんに会いに行ったり、鳥さんに会う為に海外に行くようなりました。初めて鳥さんを知った時の感動を皆さんと共有できたらと、野鳥の図鑑サイトを運営しています。 野鳥達に無理させない観察撮影を心がけたいので、基本スタンスは歩いていたら鳥さんが撮影させてくれたって出会いが1番です。
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